第21回研究大会開催のお知らせ

e-Learning教育学会 第21回研究大会を下記のとおり開催しました。

2023年3月18日 (土) 11:00 – 17:30
立命館大阪梅田キャンパス 大阪市北区小原町2-4 大阪富国生命ビル5階

第21回 会場担当 田原 憲和(立命館大学)

11:00〜11:30 受付
11:30〜12:30 会員総会

12:30〜13:30 昼休み

13:30〜13:40 開会式
e-Learning教育学会 会長 挨拶
大前 智美(大阪大学)

13:40〜14:20 基調講演1 木村 修平(立命館大学)
「AI時代の英語教育を考えるー機械翻訳などを正課授業に導入してみてー」
講演者紹介 田原 憲和(立命館大学)

14:30〜15:00 パラレルセッション1
15:10〜15:40 パラレルセッション2
15:50〜16:20 パラレルセッション3
第1会場 司会者 神谷 健一(大阪工業大学)
第2会場 司会者 清原 文代(大阪公立大学)

16:30〜17:10 基調講演2 渡邉 ゆきこ(沖縄大学)
「メタバースで学ぶ中国語」
講演者紹介 大前 智美(大阪大学)

17:10〜17:20 閉会式
e-Learning教育学会 副会長・第22回会場担当 挨拶
渡邉 ゆきこ(沖縄大学)

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発表者・発表要旨
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14:30〜15:00 パラレルセッション1
第1会場 中西 淳(大阪工業大学)
類語の使い分け学習における人工知能技術活用の試み Word2VecとBERTの外国語教育への応用
【発表要旨】
外国語学習において単語学習を避けることはできない。さらに,単語を1語1訳で覚えるだけでは十分とは言えず,類語との違いを意識した上で,それらの使い分けを学習する必要がある。類語の使い分けを学習する際には,意味的な違いや文脈的な違いを同時に考慮し,適切なタイミングで適切な語彙を選択することが重要となる。
現在,類語の使い分け学習には,シソーラス(類語辞書)が広く利用されている。一方,シソーラスの多くは,1語に対して膨大な数の類語が提示され,その中には,文脈に適していない語が多く含まれており,外国語学習者はどの語を学習すべきか判断できない。この点をふまえ,本研究では,人工知能技術を活用し,外国語学習者に適した類語学習システムの開発を試みた。具体的には,類似した意味を持つ単語を抽出するためにWord2Vecを用い,抽出された類語が文脈に適応しているかどうかを調べるためにBERTを使用し,意味的・文脈的に最適な類語を提示できるシステムを開発した。
今回の発表では,まず,5種のシソーラスの記述を調査し,既存のシソーラスの問題点を明らかにした。その後,本システムで得られた結果を既存のシソーラスと比較し,本システムの利点や欠点について考察した。調査の結果,シソーラスで選出される膨大な類語のうち,5割以上はわずか1種類のシソーラスのみにしか記述されておらず,シソーラスによって選出される類語は大きく異なることが明らかになった。
また,本システムで得られた類語を調査したところ,意味的な類似度や文脈的な適応度の順番に類語を並べ替えることが可能になり,意味・文脈どちらにおいても適切な単語を提示することが可能になった。反意語が抽出される点や,同義語の類語抽出が難しい点など,本システムにおけるいくつかの問題が見られたものの,コンピュータ技術の活用により,新たな類語の使い分け学習の可能性が示唆された。

14:30〜15:00 パラレルセッション1
第2会場 田邉 鉄(北海道大学)
中国語オンライン授業のTAについて 勤務態度と動機付け
【発表要旨】
本研究は、大学の外国語教育で重要な役割を果たすネイティブのアシスタント(TA)が、最大限に効果を発揮するための条件を、主としてTAの授業へのモチベーションから検討する。
北海道大学では、2008年から1年次2学期の中国語授業週2コマのうち1コマを、自習型CALL授業として実施している。学生が問題演習をオンデマンドで行う授業だったが、コロナの影響でCALL教室の利用が制限された2020年度からは、リアルタイム・オンライン授業に移行し、TA・TF(Teaching Fellow=スーパーTA)が、中心になって行う「教室活動」をメインに据えた授業として実施することになった。
TAは「口頭練習課題」という、対話練習を学生一人ひとりを相手に行っている。熱心な指導を行って学生の信頼を勝ち得ているTAがいる一方、学期が進むにつれ、20人担当しているのに、10分足らずで授業を終えてしまったり、学生の発音を一切矯正せず、言い間違えの指摘もろくにしなかったり、と、練習が「作業化」してしまっているケースも増えている。
また、博士課程学生であるTFは、ミニ講義やクイズ、音楽共有などで学生の興味をひこうと工夫しているが、学期終盤に入るとネタ切れ気味で疲れてしまうことも多い。
これらの問題から、TAや他言語の教員等から「中国語CALLはTAに多くを求めすぎ」という批判を受けることもあり、実際にアシスタントの域を超える働きを要求している面もあるかもしれない。このようなシステムを可能にするためには、TAを経済的に厚遇するのはもちろんのこと、情意面への配慮が不可欠である。ネイティブのインテリという自負、後輩としての学生に対する優越と親愛、研究指導を受けることもある教員への敬意など、TA・TFの授業への動機付けは様々な感情に依存している。それを踏まえて授業のデザイン、開発を実施することによる、TAの勤務やCALL授業の変化を報告する。

15:10〜15:40 パラレルセッション2
第1会場 山岡 正和(大阪府立渋谷高等学校)・首藤 美也子(大阪大学)・大前 智美(大阪大学)
「高等学校におけるSTEAM教育導入をめざした情報科授業の実践」
【発表要旨】
新学習指導要領では、「教科横断的な取組」の重要性について明記されているが、高等学校においては、教科の縛りが強く実現できていることが少ない。しかし情報科はICTスキルの習得、向上などを目標にすることで、様々な教科をクロスさせるプラットフォームと位置付けることができ、比較的自由にSTEAM 教育の実践の場にすることが可能である。
本発表は大阪大学サイバーメディアセンターの協力を得て、高等学校の情報科にSTEAM教育を導入した授業の実践報告である。「テクノロジー×外国語学習」をテーマに、外国語の文字や発音などへの興味を高めるとともに関連するICTスキル習得を目標にした体験授業を行った。英語以外の20種類の外国語を生徒に割り当て、「ありがとう」を①指定された外国語に翻訳する、②翻訳した語を録音しQRコードに変換する、③その外国語が話されている地域の情報を調べる、④①〜③をカードにまとめて提出する、という活動を行った。授業の構成においては、多くの生徒にとって学習経験がない外国語をランダムに割り当て、皆が同程度に「わからない」ことを楽しめるよう工夫した。また20種類の外国語は、Google翻訳の対応、音声サンプルの有無、地域分布や相互関連性などを考慮して選定した。
本実践の中で、生徒らの外国語=英語という固定観念が揺さぶられ、世界には色々な言語や国があることを再発見したり、外国語の学習方法としてICTを使うことに刺激される様子や、クラスメイトと教え合ったり試行錯誤しながら取り組むワークショップのような雰囲気が見られた。授業後のアンケートでも、未知のものを知る面白さ、興味に基づいて調べる楽しさ、既知の知識と比較した気づきなどSTEAM教育の成果を示唆する回答が得られた。
今回得た知見と課題を精査し、情報科におけるSTEAM教育導入を通して高大接続、産学連携の取り組みを広げていきたい。

15:10〜15:40 パラレルセッション2
第2会場 尹 智鉉(中央大学)
「初年次教育科目におけるデジタル技術活用の授業デザインと実践」
【発表要旨】
本発表では、アカデミックリテラシーを学ぶための初年次教育科目におけるデジタル技術活用の授業デザインと実践について考察する。当該科目の目的は、大学での学びの基礎となる学術的リテラシーを育成することであり、大学生として知っておきたい基礎知識を理解し、大学での学修に必要な〈知る/読む/考える〉ことに習熟しながら〈書く〉ことを中心に学べる内容となっている。
発表では、まず、①授業目的の明確化、②到達目標の設定、③学習者の特徴を分析、④学習環境の確認を実施した結果に基づき、どのような「コースレベルのブレンド」と「活動レベルのブレンド」を行ったかを述べる。具体的には、14週間のコースデザイン、BBS(掲示板)とLMS(学習管理システム)の活用方法、ユニットの主な流れと講義映像の工夫点を実例とあわせて報告する。
次に、2022年度に約1,000人(前期516名、後期482名)が履修した大規模オンデマンド型授業の成果と学習過程を分析した結果を紹介し、学生の動機づけを高めるための工夫とオンデマンドでの学びを導く多角的な支援に関する話題提供を行う。動機づけを高めるための工夫については、ARCS動機づけモデルの枠組みから、①注意(Attention)に関する工夫、②関連性(Relevance)に関する工夫、③自身(Confidence)と満足感(Satisfaction)に関する工夫に分類して述べる。オンデマンドでの学びを導く多角的な支援については、コースの事前/事中/事後の段階においてどのような支援を実施したか、同期型と非同期型の方法を併用した双方向性の担保や個別対応の試みとその実施結果を考察する。
最後に、履修者からのフィードバックを踏まえて、高大接続のためのデジタル技術活用の可能性および課題について総合的な検討を行う。

15:50〜16:20 パラレルセッション3
第1会場 難波 康治(大阪大学)・簡 珮鈴(神戸学院大学)
「VRゴーグルを利用したメタバース環境下でのオンライン授業実践」
【発表要旨】
発表者らは、2022年度2セメスターにわたり、大学院科目「第二言語実践研究A・B」の授業において、VRゴーグルを利用してメタバース環境を構築したオンライン授業実践を行なった。授業で用いた機材はMeta (Oculus) Quest 2(参加者に貸与)とPC(WindowsおよびMac)で、参加者は教員を含めそれぞれ5名であった。授業は、通常の大学院のセミナー授業をメタバースに置き換え、メタバース上のオンライン会議室であるHorizon Workroomsを主サイトとして、参加者全員がアバターを介して参加した。また、Cluster、VRChatなどVR上のSNSプラットフォームを利用してみることで、それらの授業実践の場としての利点と欠点をそれぞれ検証した。Meta (Oculus) Quest 2上で利用可能なゲームアプリや教育アプリを含む種々のアプリケーションを使用した結果を報告しあい、それらを利用した授業実践案を検討した。さらに、これらの経験から二学期目の授業では、VRあるいはメタバース環境における教育を目的とした新しいアプリを制作するためのアイデアを検討した。
以上の実践から、VRゴーグルを利用したVR環境下でのメタバースにおける教育実践のメリットと課題について報告を行う。今回は参加者が少数であったため、実践の具体例を示すとともに、主に参加学生からのフィードバックを参照してその評価を紹介する。参加者からは、VRゴーグルを用いた教室環境の構築については、想定した以上に臨場感があり、アバターを用いることについても抵抗感がないなど評価が高かった一方で、環境自体が発展途上で頻繁にアップデートが行われたこともあり、機材の設定や環境構築、オンライン接続の容易さなどについては評価が低かった。また、長時間の使用ではいわゆるVR酔いの症状を引き起こすこともあり、健康面に考慮が必要であることがわかった。

15:50〜16:20 パラレルセッション3 *開始時間に間違いがありました。ご注意ください。
第2会場 杉江 聡子(札幌国際大学)
「観光×中国語×マルチメディアを統合したプロジェクト型学習の成果と課題 地域社会の中で「中国語を使える」とはどういうことかを再考する」
【発表要旨】
新型コロナ以前、北海道は対中インバウンドが年々増加し、所謂「旅中」での接客対応のマンパワーが不足していた。新型コロナによりインバウンドは9割超の減少となり観光事業者は大打撃を受けたが、2023年春節に向けて感染対策が徐々に規制緩和され、海外旅行熱が戻っている。
日本の観光産業で中国語を使える人材のニーズは四半世紀前より継続してあり、通訳案内士資格の有無を問わず有償ガイド可能とする制度の転換や、留学生の就業を増やすなどの取り組みが進められてきた。しかし、「旅前」のプロモーションは主に行政主導で事業者が各国の旅行博や物産展を開催したり、インセンティブツアーやファムトリップを展開して既存の資源を流通させることが主な目的であった。「旅後」に関しては特に施策や事業者のサービスはなく、リピーター獲得に向けた次の「旅前」へ接続させる取り組みは不足している。
本研究は、2022年度秋学期に開講された大学の観光中国語の演習授業を対象としたアクション・リサーチである。観光産業に関連した異文化理解、中国語学習、マルチメディアコンテンツ開発の3つの要素を統合したプロジェクト型学習を実施した。授業では、観光を主幹産業とする北海道で、中国のFIT対応に必要な異文化理解教育を留学生との対話ベースで行ったうえで、学習者視点で地域の魅力を発見し、広報するための動画コンテンツを作成するグループワークを行った。
本発表では、学習成果物から「地域社会で中国語を使えるようになる」とはどういうことか、また、そのために「何を」「どのように」学ぶ必要があるのかを再考し、より効率的な授業運営に向けた教授設計の課題と改善策を検討したい。

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