第17回研究大会

第17回大会は多数の参加を得て、成功裏に終了いたしました。
次回大会は、2020年3月21日、大阪で開催予定です。

3月16日の大会のプログラムを掲載します。
なお、参加される方は発表者も含め、参加申込をよろしくお願いいたします。

日時
2019年3月16日(土)12:30~18:00
会場
常葉大学静岡草薙キャンパス(静岡市駿河区弥生町6-1)

A棟(A305:A306:A307)

アクセス:https://www.tokoha-u.ac.jp/university/campus/kusanagi/

懇親会
終了後懇親会を開催いたします。懇親会の参加申込は終了しました。当日申込はできませんのでご了承ください。
The Table(静岡駅南口すぐ、センチュリーホテル静岡1階)
会費5000円
12:00 開場
A307教室 企業展示(時間内随時)
A306教室 総会・研究発表  A305 休憩・控え室(12時以降)
12:30~12:55 総会
12:55~13:00 開会挨拶
13:00~13:30 発表1 渡邉ゆきこ 中国語の音韻検索システムを使った発音の弱点克服練習の作成
13:35~14:05 発表2 清原 文代 スマートデバイスのアクセシビリティ機能を外国語学習に活用する
14:10~14:40 発表3 有富 智世 共有可能な授業実践と自主学習を想定したICT活用の「語学教育・教材開発」と方策
14:40~14:55 休憩
14:55~15:25 発表4 河村 一樹 Moodleをプラットホームにした学生による教材開発
15:30~16:00 発表5 李 在栄 Web toonを活用した外国語教育に関する研究
ー日常生活型Web toon「当代大学生哈哈概論」の活用を中心にー
16:05~16:35 発表6 田邉 鉄 CLILの新展開:プログラミングで/を学ぶ中国語授業
16:35~16:50 休憩
16:50~17:20 発表7 杉江 聡子 観光ガイド育成のための中国語eラーニング教材の開発
17:25~17:55 発表8 李 相穆 AIを活用した外国語教育の効果と期待に関する一考察
17:55~18:00 閉会挨拶

渡邉ゆきこ(わたなべ ゆきこ)沖縄大学、大前智美・大阪大学
中国語の音韻検索システムを使った発音の弱点克服練習の作成

 

概要
中国語の発音指導をする中で、多くの学習者が苦手とする発音、あるいは特定の学習者にとって難しい発音が何であるかを認識することは比較的容易である。しかし、その問題の解決を図るためには、手本となる音声教材を用意し、教員やそれに準ずる人員が反復練習の個別指導を行ったり、学習者に音声を録音させ、録音の総時間数を上回る手間をかけてフィードバックを行ったりと、教員に大きな負担を強いるものである。
そればかりでなく、例えばそれが「2音節の単語で、第1音節が鼻母音の-enで第2音節が鼻母音-engである場合、第1音節が-engとなりやすい」という問題であった場合、その弱点克服のための練習問題を作るには、頻出単語一覧を通読して音韻的に共通する単語を複数選出するなど、作問自体に多くの労力を必要とする。
本研究は、中国語検定4級と3級の頻出単語を網羅した「中国語音韻検索システム」を授業支援システムから独立させて機能を強化し、複数の音韻情報に絞り込んだ単語検索を可能にした上、検索した単語を発表者が開発した音声合成・認識APIを活用した発音練習ソフト「ST lab」で練習問題を作成することにより、ネイティブによる録音や教員による正否判定などの必要のない、簡便で学習者による独習が可能な発音練習問題を作成する試みである。

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清原文代(きよはら ふみよ)大阪府立大学
スマートデバイスのアクセシビリティ機能を外国語学習に活用する

 

概要
1.スマートデバイスのアクセシビリティ機能
パソコン、スマートフォン、タブレット等の情報機器の操作、特にスマートフォン・タブレットの操作については、画面を直接指で触って操作するため、視覚に依存する部分が非常に大きい。視覚にハンディキャップを持つ人がこれらの機器を使用するために、アクセシビリティ機能が設けられている。ただ、購入時にはこれらの機能がOFFになっていることが多く、気づきにくい。本発表ではiOSを中心に、アクセシビリティ機能のうち、合成音声による読み上げ、音声入力といった機能を外国語学習に活用する方法、及び授業実践について述べる。
2.アプリやWebサービスの提供するアクセシビリティ機能
アプリケーションやWebサービスの中にも独自のアクセシビリティ機能を提供するものがある。本発表では動画投稿サイトFlipgridが持つ合成音声による読み上げと、音声認識による自動字幕機能を外国語学習に活用する方法、及び授業実践について紹介する。
3.個別学習に寄与するアクセシビリティ機能
発表者は第二外国語としての中国語クラスを担当しているが、日本語を母語とする初級〜中級段階の学習者にとって中国語の発音の習得は大きな困難の一つである。学習者が保有するスマートフォンのアクセシビリティ機能に含まれる合成音声による読み上げを使用することで、教科書に付属する音源以外の音声を個別に提供することが可能になる。また、授業時間数が少なく、且<つクラス規模が大きくなりがちな第二外国語では、授業中に十分な発音の個別指導の時間を取ることが難しいが、音声入力で即座に発音の結果を得られることは、学習者が個人で発音練習する際の助けとなり得る。

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有富 智世(ありとみ ちせ)常葉大学、喜久川功・常葉大学
共有可能な授業実践と自主学習を想定したICT活用の「語学教育・教材開発」と方策

 

概要
高度情報化社会に対応する「教育の情報化」において、文部科学省を中心にICTを活用した教科書・教材をめぐる検討がなされ、特に語学教育においては、高等教育機関等での使用に適合する多様な教材が求められている。いま真に求められていることは、多数のICTを活用した教材の開発が進められ、授業実践が広く実施されて、デジタル教材や教科書の検討が拡充することである。
平成26-29年度、デジタル教材の研究開発に取り組んできた(科学研究費基盤(C)26370678 / 研究課題:「初修フランス語教育のためのeポートフォリオ連動型学習支援デジタル教材の開発」)。本研究課題の目的は、平成22年頃より検討を始めた初修フランス語教育における教材開発(デジタル教材「Web〈なびふらんせ-1〉」)を発展させ,フランス語文法基礎完成を網羅する語学学習支援システムの具体化であった。本課題の成果物は、デジタル教材「Web〈なびふらんせ-2〉」であり、2019年4月より公開予定である。
上述したデジタル教材の実現化では、研究目的の達成のための方策をもって臨んだ。まず、語学教育と教育工学の連携による共同研究開発が挙げられるが、研究経費の調達、教材の制作、授業実践と精査、研究成果の公表、研究成果物の提供までも視野に入れ、実現化が望めるチーム体制を整えた。その結果、次なる課題(「デジタル教科書」の開発)への着想も得られ、発展的課題への見通しも立てることができた(平成30-33年度、科学研究費基盤(C)課題研究番号18K00759 / 研究課題:「授業内活動と自主学習を活性化する学習支援ツール群の中核となるデジタル教科書の開発」)。
本発表では、研究成果報告とともに研究目的達成のためにどのような方策を立てて臨んだかを呈し、他言語においても応用可能な教材開発の一助になればと考える。

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河村一樹 (かわむら かずき )東京国際大学
Moodleをプラットホームにした学生による教材開発

 

概要
本研究室では,ゼミナール活動の一環として,e-Learning向けのディジタル教材の開発を行ってきた。ゼミ生には,予めインストラクショナルデザインを学んでもらった上で,スライドベースの教材を開発し,e-Learningシステムに実装して実証実験まで行っている。
それまでは,開発用のプラットホームとして,各教育ベンダーのe-Learningシステム(smartFORCE/SeLPS/goocus)とグループウェア(Cybozu Live)を用いていたが,全学レベルでMoodle(Version 3.1)の運用が始まったことから,全面的にMoodleに切り替えることにした。
通常,Moodleは教育支援システムとしてのCMS/LMSでの利用が前提となるが,Moodleの[活動]/[リソース]モジュールを開発工程それぞれに合わせて使うことによって,教材開発のプラットホームとして利用するという試みを実践した。具体的には,Moodleの[活動]モジュールについては,[チャット]は教員と学生同士の相互コミュニケーションの場に,[フォーラム]はグループ内でのファイル共有として,[データベース]は過去問の収集として,[課題]は模擬試験問題の提出に,[ワークショップ]は問題の相互レビューに,[小テスト]は模擬問題の受験用に,[フィードバック]はゼミ生へのアンケートに,それぞれ用いた。また,[リソース]モジュールについては,[URL]はディジタル教材(Googleドライブ上)の閲覧に,[ファイル]は開発工程で必要となる各種ファイルの配布に,それぞれ用いた。
以上の形で,1年間かけて,3年ゼミ生(各1人)と4年ゼミ生(各2-3人)の混成チームにより,Moodleをプラットホームにした開発を進めてきた。ディジタル教材としては,ゼミ生の希望により,自動車免許の学科試験に向けての自学自習用教材と模擬試験とした。その結果,27カテゴリーのディジタル教材(音声合成による動画)と模擬試験(100問)をMoodleに実装するとともに,これから実証実験を予定している。

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李在栄(Li Zairong)東北師範大学、袁磊・広西師範大学、Kang Seromi・東北師範大学人文学院
Web toonを活用した外国語教育に関する研究
ー日常生活型Web toon「当代大学生哈哈概論」の活用を中心にー

 

概要
外国語教育におけるe-learningにおいて,多様なコンテンツの活用が求められる。その中で、モバイルの普及と作品数の増加により、Web toon(オンライン漫画)は利用し易いコンテンツの一つである。ところが、これまで、Web toonを外国語教育に活用した研究は少ない。
中国において、Web toonの利用者数は急成長し、2018年には約1億人に達した。その中で、特に大学生の割合が高い現状である。また、Web toon専門プラットフォーム(例:「「快看」」)もあれば、総合コンテンツプラットフォーム(「TenCent」や「IQIYI」など)もWeb toonサービスを提供することになった。いずれのプラットフォームもAPPがあり、モバイルさえあれば、いつでもどこでも簡単に接続可能である。サービスの種類は、課金と非課金両方あるが、課金としても、非常に安い料金であり、大学生の場合、負担なして利用可能な状況である。
従って、本研究では,大学の外国語(中国語)教育において、Web toonを活用したブレンディッド授業を実施し、Web toonを活用したブレンディッド授業モデルとその効果について研究した。学習者は中国語専攻の上級レベルの留学生であり、学習目標はさらに中国文化と日常口語の習得をすることである。周2コマの授業構成は、Web toonを「読む前に」(授業前と授業中)―>「読む時」(授業中)―>「読んだ後」(授業中)に分けて行った。利用したWeb toonコンテンツは、中国大学生達の日常生活をコミック且つリアルに描いた「当代大学生哈哈概論」である。
その結果、日常生活型Web toon(例:「当代大学生哈哈概論」)を活用したブレンディッド授業は、上級レベルの外国語学習者にとって、外国語への関心と満足度、特に外国文化と日常口語の理解に効果があることが分かった。

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田邉 鉄(たなべ てつ)北海道大学
CLILの新展開:プログラミングで/を学ぶ中国語授業

 

概要
近年外国語教育において、外国語「を」教えるから、外国語「で」教えるへのシフト、コンテンツ言語統合学習(CLIL)が注目されている。初学者が挫折しがちな、語学の初歩の段階における単調な反復練習を続けるモチベーションを、教科学習という具体的で実現可能な目標を持たせることで支える、というのは秀逸なアイデアであるが、学習者の発達段階に応じた知的好奇心を満足させるような教科学習には、それなりの言語リソースが必要であり、大学の初習外国語科目で実施するのは困難である。
一方、ICTの利用やSNSでの交流、AIによる知的作業のサポートなどが一般的になると、これまでの中国語学習の初級段階において重視されてきた「発音」「語彙」の習得は、少なくとも最重要課題・初級段階の必須項目ではなくなる可能性がある。
そこでCLILのエンジンにあたる言語LanguageをコンテンツContentsととらえ、コンテンツの一つであったコンピュータプログラミングを一種の「言語習得活動」としてLanguageと位置づける、「逆CLIL」のカリキュラムおよび、プログラミングスキルによって自然言語の構造を捉える教材とサポートシステムを開発する研究を構想した。本研究はJSPS科研費16H03351,18H00682の助成を受けたものである。

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杉江 聡子(すぎえ さとこ)北海道大学
観光ガイド育成のための中国語eラーニング教材の開発

 

概要
観光政策の目標として2020年までに訪日観光客4000万人、2030年までに6000万人が設定され、観光産業の人的資源拡充を実現する観光教育や外国語教育が期待されている(観光庁2016,明日の日本を支える観光ビジョン)。例えば北海道では、平成29年度の訪日外国人数が279万人を超え、国・地域別では中華圏(中国、台湾、香港等)が約7割を占めており、観光産業におけるコミュニケーション場面で必要な外国語は英語よりもむしろ中国語と言っても過言ではない状況にある。ソフト面の受け入れ体制整備として、プロの通訳ガイド有資格者である通訳案内士のみならず、ボランティアガイドや接客サービス従事者の多言語対応能力の向上が必須であり、人材育成が急務である。本来は産学官連携による体系的な人材育成プログラムを開発すべきであるが、地方都市においては、ここ数年でようやく産業ニーズに基づく個別の研修などの取り組みに着手した段階にある。学習者が自主的に学ぶインフォーマル学習や、限られた学習時間を有効に活用するための反転学習を想定した、ICT活用の学習環境の整備、教材開発、教育実践は不足している。そこで本研究では、学生、社会人、シニア学習者といった幅広い学習者が観光コミュニケーション場面での実用的な中国語表現を学習できるeラーニング環境の構築を目的として、観光ガイド育成のための中国語eラーニング教材を開発した。通訳案内士のガイド業務の実践知に基づき、空港出迎え、交通移動、ホテルチェックイン、市内の主要観光地ガイド解説、地元のグルメ・食事、お土産ショッピング、ホテルチェックアウト、空港見送りのテーマ別に教材を構成した。発表では、教材の実物をデモンストレーションすると共に、開発のプロセス、オープンソースのLMSを用いたプラットフォームの構築、テーマ別コンテンツの設計、開発環境と具体的手法、及び通訳案内士による一次評価の結果について報告する。

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李 相穆(い さんもく)九州大学
AIを活用した外国語教育の効果と期待に関する一考察

 

近年外国語教育が重要視される中で、人工知能(AI)技術を活用した外国語教育の試みがみられるようになった。大学の英語教育における独立型ロボットを導入した授業や、AIを使用してアプリやソフトでディープラーニングする英語学習がその例である。また、人前で英語を使うのが恥ずかしい児童に対する教育にも活用されている。
しかしAIを活用した外国語教育はまだ初歩的な段階に留まっていて、どのような学習効果があるのか、あるいは授業のどの部分をAIが担当するべきか、という点については不明のままである。また、導入してはみたものの、期待通りの働きがなされなかったという不満の声も多く聞かれる。つまり、AIの技術的な側面だけでなく、教師と学生もまだそれを受け入れられる段階に来ていないのかもしれない。教育教材開発の現場でよくありがちな「効果の検証なしに技術だけが先行してしまう例」にならぬよう気をつけなければならない。
そこで、本発表ではAIを活用した外国語教育の事例を紹介し、外国教育における効果を分析する。また教師と学生を対象に実施したアンケートからAIに対する使用者からの要望、およびAIの技術的な限界と改善点について述べる。

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